こんばんは。マクフライです。最近ペアリングする食材がお手軽ファーストフードばかりだったので、しっかりした料理と合わせたいと思い、レシピ本から料理を作りました(作ってもらいました)。
あまりにもペアリングがすばらしかったのでペアリングベースで記事を書いていきますが、しっかりと比較テイスティングも行っておりますので最後まで読んでいただけたらと思います。
10年かかって地味ごはん
今日のレシピはこちらから抜粋。和田明日香さんのレシピ本です。
インスタ、ティックトックなど、映えベース全盛期にこのタイトル。すさまじい逆張りです。ただし、ジョブスのノームコアスタイルのように、一目置かざるを得ないこのタイトル。
まさに究極の普通です。
私は料理に全然詳しくないので絶対自分ではこの本を手にしないのですが、友達のホームパーティでこの本に書いてある料理を作ってもらったら、ビックリするほど美味しかったので、我が家も購入しました。料理は見た目ではありません。そこから作った料理はこちらです。
主役は大根 豚スペアリブの塩煮
決して地味だけでは片付けられない。凛とした佇まい。
超絶ハイブランドの高級白シャツのような究極のミニマルスタイルを体現しております。
細かいレシピは言えない(自分で作ってないのでわかりません!)のですが、地味というよりも、すばらしさから派手さを引いた引き算的料理がこちらの塩煮だと思います。
塩とニンニクのだしを吸い込んだ大根の味わいは一言でいうとじんわり。口の中で柔らかく広がり、後味にくる大根の苦味が全体を引き締めてくれまます。さすが主役。この大根だけでごはん1.5杯はいけるでしょう。
そしてスペアリブは柔らかく、滋味深い味わいが噛んだ瞬間に脂と一緒に口のなかで広がります。脂の甘さとだしの旨味が混然一体となり、それはそれは素晴らしい味わいです。どんなお酒と飲んでも最高のおつまみになることは間違いなしです。
それではこの料理にはどんなワインが合うでしょうか。仮説を立ててみました。
・大根からは苦みも感じるので苦味や野菜の青さのある、だしの味にも負けない赤ワイン
・スペアリブには脂の甘味さえも包み込んでくれる甘くて味の強い赤ワイン
本来であれば一つの料理に一つのワインを合わせるのが普通ですが、勉強のため、究極のペアリングのため、贅沢にそれぞれの食材に別々のワインを合わせてみました。
カベルネフランとカベルネソーヴィニヨン
まずは大根に合わせたワインがコチラ。
ル カベルネ・フラン by シャトー・ピエルセル 2020
カベルネフラン100%のボルドーワイン。カベルネフランの特徴がばっちり出ております。
次にスペアリブにはこのワインを合わせました。
モンテス アルファスペシャル キュヴェカベルネ ソーヴィニヨン 2020
黒いラベルが贅沢感を醸し出しております。エノテカでおなじみのモンテス
チリのプレミアムワインを世界に広めたと言っても過言ではないブランドからのプレミアムレンジのワイン。美味しくないわけがありません。
それではどんなペアリングだったのか、検証したいと思います。
【大根】×【カベルネフラン】 【スペアリブ】×【カベルネソーヴィニヨン】
大根×カベルネフラン
文句なしの美味さです。大根の苦味を邪魔することなく、ワインが大根に寄り添います。だしの滋味深い味わいにワインの果実味が純粋にプラスオンします。ワインから感じる苦味≒ヴェジェタルな味わいと大根の苦味が完全に同質化。二つの味わいが混ざり合うことで味わいのボリュームが広がるイメージです。
ちなみに、スペアリブと合わせると少しお肉の脂にワインの味わいが押され気味ですが、ワインの味わいが完全に負けるということはありません。
スペアリブ×カベルネソーヴィニヨン
この組み合わせもとんでもなく素晴らしいです。人によってはスペアリブの脂が少し重いかなと思うかもしれないのですが、このワインを合わせると、スペアリブの脂の重さを一切感じなくなります。脂の甘味をワインの甘さが包み込むと同時に口中に感じるもったりする味わいを払拭し、上品な甘味が広がります。「脂の昇華」というのにふさわしい味わいです。
もちろん大根と合わせても合わないわけではありません。だしの甘味とワインの甘味のバランスがちょうどよいため、どっちの味わいが強すぎるということはないからです。ただ繊細な大根の苦味にワインの甘味が強すぎて大根の味わいを途中で断ち切ってしまう感覚が出てきてしまいます。完璧なペアリングとは言えませんが許容範囲です。
大根とスペアリブの地味ごはんレシピにカベルネフランとカベルネソーヴィニヨンブラン。地味とは程遠いほどのベストペアリングです。
それでは、何故大根とスペアリブでこれほどペアリング要素が異なるか比較テイスティングしてみます。
フランスのカベルネフランとチリのカベルネソーヴィニヨン
外観
正直横から見た外観は全く違いが判りません。しかし!テイスティングの鉄則。
ワインのエッジ=縁を比較したらどうでしょう。
全体的には同じダークチェリーですが、明らかにカベルネフランのエッジは紫がでており、カベルネソーヴィニヨンのエッジは赤色が出てますね。同じ2020年ヴィンテージなのに明確に異なります。
もちろんフランスとチリで国も違いますが、品種特性が表れていると思います。それでは次に香りを取ってみます。
香り
フランス・カベルネフラン
香りの第一印象は開いていて、複雑さがあります。熟したブルーベリーやブラックベリーの香りにシダ、杉、ピーマンなど青い野菜のような香りがしっかりと感じられます。そこに生肉やインク、甘草など香りの種類は非常に豊富。フルーツ主体というよりもヴェジェタルなニュアンスが強いです。
チリ・カベルネソーヴィニヨン
第一印象はthe 濃厚です。完熟したブラックベリーやプルーンのジャムに牡丹の花、ローストしたチョコレートにナツメグ、シナモンなどの甘やかなスパイス。凝縮した香りにメントールの爽やかな香りも交じり合い、甘さだけでないとても贅沢な香りとなっております。
味わい
フランス・カベルネフラン
アタックは力強くて、黒系果実の甘味が舌に残りますがヴェジェタルな風味もしっかり感じ取れ、甘さが強いという印象は少し薄まります。
アルコールは14.5%ですが、丸みのある酸の量が多いため、アルコールほど重さを感じさせません。タンニンは若干収斂性があります。
全体的に力強さがありますが、若々しさも感じる味わいです。
チリ・カベルネソーヴィニヨン
力強さのあるアタックですが、スムーズに口中に流れ込みます。
ベリー系のまろやかな甘味と力強いアルコールがふくよかなボディを形成しております。酸は穏やかで丸みがあり、タンニンは溶け込んでいて非常に心地よい。
滑らかな舌触りを感じながら果実の甘味が鼻に抜け心地よいフィニッシュとなります。余韻は非常に長いです。
同じカベルネとつく品種ですが、全く方向性が異なる2種のテイスティングを行い非常に勉強になりました。
とくに大根の苦味にあうワインはカベルネフランしかないのではというくらいばっちり合います。
地味ごはんレシピのクオリティは底知れないのでいつか別メニューで再度ペアリング検証いたします。
是非皆様もペアリングとテイスティングを楽しんでください。
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